POROY駅標高3,486 mクスコまで17km
クスコへ帰る帰りの高原列車は、アグアスカリエンテス駅を午後3時半に出発する。
ところが相棒のT君がその時刻になっても現れなかった。ツアーコンダクターのナオキータ嬢(朝長直子氏)はホームで天を仰いだ。僕は今にも動き出そうとする列車から飛降り、「T君探索隊」に志願した。ところが、「あなたはもうチケットを切ったから駄目だと」一旦閉ったドアをあけ、中へ追いやられてしまった。無情にも、ナオキータ嬢一人残し、列車は出発してしまった。
車中私は悪い方悪い方へと思い巡らすのだった。強盗にでもあったのだろうか(最後に彼を見たのは駅前のみやげ物バザールのケーナ屋の前)、それとも、高山病が悪化しどこかで卒倒しているのだろうか、山形のお父上になんとご報告しようかと、、、、、、、、、、、。その間3時間45分はあまりに長く、マチュピチュトレッキングは高山病を悪化させ、頭はズキズキ、気持ちも悪い。
暗澹たる思いでクスコに着き、今宵のフォルクローレデイナーショーのある、レストラン「エル トウルコ」へ行くと、なんとT君が元気そうにいて、「やあ!!心配かけました」。やれやれ、よかったよかった。
彼が言うには、駅前のバザールにはまってしまい、値引き交渉に夢中で、気が付いたら列車は出た後だったとのこと。ナオキータ嬢と15分あとの次の列車に乗って、クスコより一つ手前のPOROY駅で降り、旅行社差し向けの自動車をすっ飛ばして、今ここにいるのだという。POROYからクスコへはスイッチバックが何箇所もあり、列車がそれで牛歩の歩みとなる間、彼を載せた車が山道をすっ飛ばし、我々を追い抜いた、こういう図式となる。
バザールでわれを忘れるというのは分かる。私も、アンモナイト売りのインディヘナの女性につかっまてしまい「ニイサン イクラナラ カウダネ」と日本語交じりのスペイン語で言い寄られ(石が好きな私は、実際欲しかったのであるが)28ドルの言い値を18ドルでゲットしたのだった。
帰りの列車の興味深い出来事を一つ。
往きの旅情たっぷりの雰囲気とは一転、軽やかなアナウンスと賑やかな音楽が流れたかと思うと、列車の通路をアルパカのショールをまとった、女性が歩き回り始めた。こんどは、ペルーコットン(ピーマコットン?)のシャツを羽織った男性モデルが歩き始めた。車中ファッションショーの始まり始まり。
車窓からクスコの夜景を望む
乗客は何事かといぶかしんだが、やがて事態が飲み込め、拍手喝采。
モデルさんなんだが、どうもどこかで見たようなと思っていると、なんと、先ほどまでの乗務員さんの男女であった。それも分かり、拍手は更に大きくなった。
恥ずかしげなそぶりは微塵も無い。(新幹線の乗務員が一転モデルとなった状況を想像して見て下さい)いや、この人たちはモデルが本業で、その前にちょっと、客室乗務員もやっております、というのがうがった見方なのだろう。
ショーが終わると、また一転、モデル兼車掌さんは着て歩いた衣類の即売を始めるのであった。
これも、「オリエント急行」社の戦略、観光客を楽しませる、観光立国ペルーの一面なのであろう。
(この稿平成17年8月25日記す)